2020.05.01
新型コロナウイルス感染症の拡大により、日常生活が様変わりしました。会社に出社する、メンバーと打ち合わせをする、接待で会食する、飲み会で口角泡を飛ばす、これまで当たり前に行ってきた日常が鳴りを潜め、「密閉した空間」「密集した場所」「密接した場面」という“3密”を避けることが求められます。政府も緊急事態宣言を出し、人と人との接触を最低7割、極力8割減少させるよう、全国民に自粛を求めている状況です。当面の間は我慢が必要ですが、これを乗り越えれば、別の世界も見えてくるかもしれません。
●自動車、電機メーカーが人工呼吸器の増産支援に名乗り
緊急事態が続く中、医療現場で働く皆様には頭が下がります。通常の医療提供に加え、新型コロナウイルス感染症患者への対応が加わり、過度な負担がかかっています。いわゆる医療崩壊が起きつつあるといわれますが、医療関係者の献身的な努力で、混乱に至らずに、何とか踏みとどまっていることができており、感謝しても感謝が足りないほどです。
医療機器業界も、新型コロナウイルス感染症蔓延を受け、重度の肺炎患者などに不可欠とされる人工呼吸器の増産体制を敷くなど、懸命に社会的使命を果たしています。さらに日本の基幹産業である自動車業界、電機業界などが、医療機器メーカーの人工呼吸器増産などに向け、サポートに名乗りを上げるなど、異業種企業のバックアップも力強いと期待しています。
●トヨタは生産効率化を支援 ソニーは生産受託を検討
世界有数の自動車メーカーであるトヨタ自動車は4月7日、医療機器メーカーによる人工呼吸器などの増産に対するサポートを表明しました。何らかの不良が生じた段階で、生産ラインを止めるといった「トヨタ生産方式」のノウハウを持つことで知られるトヨタ自動車は、こうしたノウハウを医療機器メーカーに提供。工程改善などにつなげることで、生産性向上につなげたい考えです。
家電大手のソニーも、アコマ医科工業など人工呼吸器メーカー数社と、生産受託の協議を行っているといい、吉田憲一郎CEOも、「基盤やモジュールの製造、最終製品の組み立て・検査などの支援が可能で、3ヶ月程度で生産を開始し、人工呼吸器1,000台以上の供給支援を実現したい」と意気込みを示しています。こうした異業種のサポートは、どんどん広がりつつあります。
●感染拡大は新たな取り組みへの実証実験 発想の転換が必要
確かに、新型コロナウイルス感染症は、人類、生命にとって間違いなく脅威です。こうした負の側面ばかり強調すると、気が滅入るばかりなので少し見方を変えると、これを乗り越えた先には、これまでと異なる社会に一変する機会でもあると捉えることもできます。中小企業も少なくない医療機器業界が、大企業で世界有数のトヨタやソニーとかかわることで何らかのヒントをつかむこともあるでしょう。またこうしたコラボレーションにより、これまで規制産業として二の足を踏んでいた異業種企業が、より医療機器業界を身近に感じ、新規参入する機会となるかもしれません。
さらに、働き方改革という側面では、リモートワークもそうですし、在宅でのオンライン学習、医療現場でのオンライン診療など、従来では実施困難だったことへのチャレンジにもつながります。新型コロナウイルス感染症をきっかけに、新たに芽生えた、こうした取り組みで明らかになった知見や課題を検証することで、時代を10年先取りできるようになるかもしれません。こうした危機的状況ですが、あえて私は前向きに捉えるよう努力しています。
【MEジャーナル 半田 良太】