2013.10.01
米アップルのスマートフォンiPhoneの最新モデルが9月20日、世界主要都市で同時発売され、日本でもiPhoneフィーバーが吹き荒れています。旧モデルは1年前に発売されたばかりで、製品寿命はわずか1年程と、改良改善を繰り返す医療機器の姿を重ねてしまいました。仮に新型iPhoneの発売が、日本だけ1年遅れることになれば、これほどの注目は浴びないでしょう。そう考えると、製品特性が違うので同列に扱えませんが、日本の医療機器市場で、最先端の製品にアクセスできず、周回遅れの旧モデル品が多く流通している状況を、早急に改善すべきだと改めて認識しました。
●薬事法改正で審査のスピードアップ図る
過去のコラムでもご紹介したように、現在、厚生労働省は医療機器の特性を踏まえた審査を進めるため、薬事法改正法案を準備中。秋に開かれる臨時国会での成立を目指しています。法改正の狙いとして、民間の「第三者認証機関」が、今まで市場で使われてきた医療機器の審査を受け持つ一方、PMDA(医薬品医療機器総合機構)が、今までに発売されてこなかった、新しい医療機器の審査に特化することで、全体としてスピードアップを図るものです。現行制度の大幅見直しを進めるもので、業界関係者からも高い期待が寄せられています。
●認証制度中心の諸外国の背中はまだ遠い
私も、薬事法改正法案の成立とその実効性に期待している一人ですが、ある業界関係者は、「世界に伍して戦っていけるレベルにはまだ達しない」と見立てます。
EUでは、CEマークという認証制度を敷き、企業は迅速に市場に製品を送り出すことが可能になっています。韓国でも、十年以上前から医療機器法を制定。審査迅速化を実現し、国を挙げて医療機器産業の成長を後押ししています。彼らの共通点は、製品を市場に投入することを優先した仕組みを採用していること。とりあえずチャレンジし、何か不具合が生じれば軌道修正をするというスタンスなのです。
一方、日本では、安全性と有効性のバランスを取りながら、こうした国々の背中を追っているため、どうしてもスピード感は劣ってしまうのです。薬事法改正により、数ヶ月のタイムラグで新製品を使えるようになり、旧モデルを使わなければならないという悲哀を味わわなくて済むかもしれません。ただiPhoneを例に挙げたように、最先端の製品を、これらの国と同時に手にできるという果実が得られるかは、不透明といえるでしょう。つまり産業振興という観点からみると、制度のマイナーチェンジでは限界に近づいているということです。
●日本のものづくり力を信頼した制度設計も視野に入れるべき
そこで私は、高度経済成長を支え、いまだ競争力を保っている日本の“ものづくり力”を信頼しても良いのではないかと思うのです。医療機器は、医薬品のように、化合物が人体にどのように作用するかわからないという不確定要素は多くありません。製品の完成度は高く、リスクの多くは医師の技量によるといっても過言ではありません。
安全面をないがしろにして良いというのではありませんが、産業振興に少し比重を置いた考え方をしても良いと思うのです。医療機器の特性に応じた審査を採用する薬事法改正は、医療機器産業を成長路線に乗せるものです。ただそのレールの上を疾走し、医療機器産業が日本経済の牽引役となるためには、もう一段の規制緩和が必要で、抜本的な制度見直しが不可欠といえます。
【MEジャーナル 半田 良太】