2014.04.01
今年4月から、冠動脈の狭窄部位に金属の筒(ステント)を留置する、「経皮的冠動脈ステント留置術」の診療報酬点数が細分化されます。厚生労働省は、「薬物療法で十分な、重度狭窄のない患者にも、高い保険点数を取るためにステント留置をしている」との批判を耳にし、救急搬送される重症患者には高い点数を、計画的・待機的な治療を行う患者には低い点数を、それぞれつけるよう改定します。つまり、冠動脈ステント治療の評価にメリハリをつけ、必要性の低い患者への治療を是正するというのが、今回の点数改定に込められた厚労省の「メッセージ」といえます。
●医療材料の中で最大の市場を形成
冠動脈ステント市場は、保険償還される保険医療材料の中で最大規模を誇るといわれます。そのステントを用いた保険診療は国内で1994年にスタート。2004年には、主流となっている、血管の再狭窄を防ぐためにステント表面に薬剤を塗布したタイプも登場しました。血管にカテーテルを挿入して狭窄部位を拡張できる「低侵襲治療」として脚光を浴び、それとともに、ステント市場も右肩上がりで成長しました。
●生体吸収型ステント開発中も技術的課題が存在
市場の成長は企業の過当競争にもつながりました。アボットやテルモなど国内外の企業が乱立し、この市場を開拓したジョンソン・エンド・ジョンソンが2011年に撤退しました。 J&Jが撤退を決める数年前に時計の針を戻すと、ステント留置で引き起こされる血栓症にも注目が集まりはじめていました。各社は、次世代品として、ステントの素材を金属ではなく、一定期間後に体内で分解・吸収される生体吸収タイプに切り替え、開発を進めています。とはいえ、細い血管への対応など、製品開発上、クリアすべき技術的な課題も少なくないようで、保険診療にこぎつけるまではもう少し時間が必要でしょう。J&Jの撤退は、こうしたことも見越した上での「選択と集中」だったのかもしれません。
●トリプルパンチの克服を
こうした中、国内でステントを用いた診療報酬が引き締められることになりました。ステントを留置するほど重症でない患者の割合が、どの程度存在するのか分かりませんが、この影響は小さくありません。企業には、「競争激化」「次世代品登場までのタイムラグ」に、「使用環境の悪化」(医療機関の診療報酬減額)が加わり、トリプルパンチとなりますが、その克服が求められます。
【MEジャーナル 半田 良太】