2014.03.01
4月からの診療報酬改定の概要が固まりました。キーワードは「医療機能の分化」と「在宅医療の充実」。厚生労働省は、急性期医療を担う、患者7人に看護師1人を配置する「7対1入院基本料」算定病床の偏在を、是正させる意向です。不足気味の、急性期医療を終えた患者の受け入れ先「地域包括ケア病床」を高く評価することで、病期に応じたシームレスの医療提供体制を整える考え。また団塊の世代の高齢化などを受け、慢性疾患を抱える患者を受け持つ「主治医機能」を、診療所や中小病院に果たしてもらうための評価体系を敷いた事も、改定の特徴のひとつです。
●医薬品取引で、価格未妥結先の医療機関にペナルティーを科す新制度スタート
そうした改定の中で、ひときわ注目を集めているのが、医薬品価格が決まらないまま製品納入する、「未妥結仮納入」を続ける調剤薬局、200床以上の病院の基本料を減額する仕組みです。
厚労省は、未妥結仮納入について、公定価格である薬価を見直すために市場流通価格を調べる「医薬品価格調査」に支障を来たす行為で、もはや看過できなくなったと判断。薬局や病院が、流通業者に無理な値引きを要求することが、未妥結仮納入につながっていると判断し、購入側にペナルティーを科すという提案をしました。案の定、薬局や病院の多くは、「民間取引への不当な公的介入」「当事者の一方のみペナルティーを科すのは不公平」と反発しています。
●羨望の眼差しで見る医療機器流通業者
ある医療機器の流通業者は、医薬品流通業者と同様の悩みを抱えているため、医療機関に対するいわゆる価格未妥結減算について、「医薬品だけでなく医療機器も対象にして欲しい」と、羨望の眼差しで見ています。医薬品や医療機器に関わらず、流通業者は製造、購入側に挟まれていることから、決して立場が強いとはいえませんので、こうした気持ちは理解できます。
●医療機器の適正使用支援を自負する流通業者は、「正当な対価を要求すべき」
ただ医療機器流通業者には、「製品を右から左に流すだけではない」「臨床現場で、手術や手技ごとに、異なる医療材料・機器の使い分けを支援している」と、自らの仕事への自負心があるようですので、それであれば公的介入に期待すべきではありません。自らの仕事に対する対価を明確化して、その費用負担を求めるとともに、価格未妥結は困ると、正面から医療機関に主張すべきでしょう。
●流通のあり方を見直す契機に
かく言う私も、正論を振りかざすだけで、医薬品、医療機器の未妥結仮納入が収まるとは考えていません。購入側は、厳しい診療報酬改定の中で、薬価差を経営原資にあてたいという意向は強いでしょうし、流通業者も、立場の弱さだけでなく、取引欲しさに医療機関に過剰なサービスを提供してきたということもあるでしょう。そうした積み重ねが、未妥結仮納入という現状を生み出しているのですから。
「当事者の一方のみペナルティーを科す」のは、大変いびつですが、厚労省は厳格に運用する考えは薄いように感じます。つまり厚労省は、「公的保険制度下での行き過ぎた行為は、民間同士の取引でも目を瞑らない」という強い姿勢を打ち出すこと自体が目的だったと考えています。
その意図は、メーカー、流通業者、医療機関が、現状を省みて、それぞれが、公的保険制度下でのあるべき姿を模索する契機にして欲しいということではないでしょうか。それは医療機器業界にも向けられていることを忘れないでください。
【MEジャーナル 半田 良太】