2014.06.01
医薬品医療機器等法(改正薬事法)が施行される11月まで残り約半年に迫りました。医薬品医療機器等法は、これまで医薬品と一体的に運用していた医療機器の規制を分離・独立することが大きな柱の一つ。政府も、不必要な規制を緩和して、医療機器を含めた医療関連産業を経済の牽引役に育成すべく、大きな期待を寄せています。所管の厚生労働省は、法律を運用するための細部の規程作りをしている真っ最中で、4月末に一部の細則が示されるなど、その骨格が明らかになりつつあります。
●プログラムの単独医療機器化で、モバイルアプリも規制対象に
その中で、今回注目したのは、単体プログラムの単独医療機器化です。従来、医療機器は、疾病の診断、治療、予防に使用する“有体物”としてきましたが、電子計算機などに指令するプログラム、つまり“無体物”もこれに含むと、医薬品医療機器法の中で謳っています。例えば、CTやMRIなどの画像診断機器に組み込まれるプログラム。これまでは、ハードウェアに組み込まれなければ医療機器とみなしませんでしたが、今後は、単独で医療機器として認められることになります。それだけではありません。今後は世界的に急速に普及を続ける、スマートフォンやタブレット端末などで稼動する、ヘルスケア関係のアプリケーションも規制対象に含まれることになります。
●規制の網掛けが困難なアプリ「裁量で判断」
ただ、すべてのヘルスケアアプリが、規制対象に含まれるわけではありません。厚労省が示した細則をみると、人体へのリスクの濃淡によって、法規制の対象とするものと、それ以外のものとの線引きを検討しているということです。米国の事例を参考に、規制対象とするかどうかのふるいにかけており、スマホなどに接続したセンサーを使用して、心臓の電気信号を測定・表示するものや、医薬品注入ポンプの機能や設定を変えるモバイルアプリを規制する方向で調整しています。
一方、規制当局の裁量によりその都度、規制の対象とするか判断するものも少なくないようです。(1)兆候や症状を記載した質問票を通じ、最適な医療機関・診療科を助言し、患者を誘導するようなアプリ(2)患者が測定した血圧データなどを電子健康記録などにアップロードできるようなアプリ-については、その都度、裁量で判断する方向で検討しています。
●国際調和取れた、リーズナブルな規制を
少子高齢化の進み、医療ニーズが増大しており、社会保障費の抑制がいっそう叫ばれている日本。医療の効率化、健康管理や予防医療や、なかなか進まない遠隔医療などで、ヘルスケアアプリが活用され、活躍する可能性は大いにあるでしょう。後は、国際調和の取れた、適切な規制が整備されれば、産業としての競争力を高めることは十分可能になるはずです。
薬事法というハードルを過度に意識した結果、中小企業の優れたものづくり技術が、医療機器に活かしきれなかったという事実。その反省も踏まえ、ようやく11月、医療機器の特性を踏まえた医薬品医療機器等法がスタートするのです。
施行までの残り半年間、厚労省には、医療機器業界と密接に意見交換した上で、わかりやすくリーズナブルな規制となるよう、最後までアクセルを緩めずに、がんばってもらいたいものです。そうすれば、中小企業、IT系企業の新規参入が加速し、産業として高い競争力を獲得することも夢ではありません。とくにモバイルアプリは、“無体物”のため、ダウンロードやクラウドを使えば、国境を問わずに普及させることが可能。諸外国に比べいち早く高齢化を迎える日本には、モバイルアプリの分野で、多くのチャンスが眠っているはずです。
【MEジャーナル 半田 良太】