2015.01.01
2014年11月25日から、医薬品医療機器等法が施行されました。これまで医薬品を前提にした規制でしたが、医療機器や再生医療の特性に応じた規制に改められたことで、医療機器業界をはじめとする関係者から高い評価を受けていることは、ご承知のとおりです。今回のコラムでは、産業成長と医療への貢献を両立できる可能性を秘める、「ソフトウェア単体を医療機器として認める」という規制の見直しついて、解説していきたいと思います。
●「異業種のIT企業も機器市場に注目 新規参入の増加も想定
医薬品医療機器等法の施行前までは、ソフトウェアはハードウェアとセットで販売しなければならないと規制されていました。そのためソフトウェアの開発企業にとって、新しいアプローチの製品を開発したところで、販売済みのハードウェアにダウンロードすることができません。多くのソフトウェア企業は、ビジネスの柔軟性に乏しい医療機器市場よりも、既存品に追加してダウンロードできるパソコンや、スマートフォンのアプリケーションなどの市場を優先。医療機器市場の魅力度は、相対的に低かったといえます。しかし、昨年11月からは、ソフトウェア単体で医療機器として販売することを認める、医薬品医療機器医等法が施行されたため、少子高齢化の進展などで市場規模が増加する医療機器市場の潜在成長力に注目する企業が増加しています。
●スマホでの医療用アプリの開発が加速
それでは、どういった分野で、医療機器のソフトウェアが望まれるのでしょうか。例えば、急速に普及が進むスマホ市場。すでに海外では、スマホを用いた血圧測定や、電極つきのケースを装着したスマホ心電計などが発売されています。またスマホを用いた肺活量測定のスパイロメトリー、皮膚がんチェッカーなど、用途は拡大しています。スマホは、小型コンピュータとしての側面もあり、更なる高性能化、バッテリー性能の向上などで、在宅医療などの現場でも活用される場面も増えるといわれています。規制緩和が進めば、遠隔医療などでも力を発揮することは間違いありません。
●がんの鑑別診断でも力を発揮か
画像診断分野も無視できません。これまでCT、MRIなどは、撮影画像を立体処理することのできるソフトウェアも存在するなど、すでに一定のプレゼンスを発揮しております。
今後は、画像データで「がん」などの病変が疑われる箇所に、矢印や丸印などをつける「コンピュータ支援検出」や、病変と疑われる箇所を、自動的に鑑別診断する「コンピュータ支援診断」などで、ソフトウェアが力を発揮すると期待されています。まだまだ改善の余地があるようですが、精度を高めて実用化が進めば、ヒューマンエラーや、放射線科医不足などをカバーするという観点からも、期待の高い分野といえます。このほか、冠動脈の血流を、画像データとアルゴリズムを組み合わせて評価する「血流量評価ソフト」も、海外で製品化にめどがつけたといわれています。非侵襲でカテーテルやバルーン治療を選択することが出来るようになる可能性もあり、注目を集めています。
●医療と経済への貢献を期待
これまでのコラムでは、既存の医療機器メーカーや、ものづくり力を持つ中小の「製造業」にスポットを当てることが多かったと思います。今回紹介したソフトウェアの分野でもスマホアプリなどで技術力を持つ、ユニークな企業が存在します。既存メーカー、中小の製造業、アプリ開発などのソフトウェア、ITベンチャーが、それぞれの分野で役割を果たすことで、日本の医療への貢献と、経済牽引産業化を両立してくれるのではないか、期待しています。
【MEジャーナル 半田 良太】