2015.12.01
医薬品とセットで使う医療機器の開発が進んでいますが、保険適用時期にズレが生じる制度的な不備があることから、厚生労働省は、運用改善に乗り出す方向で検討を開始しました。例えば脳腫瘍治療では、注射剤「レザフィリン」から半年遅れで、患部にレーザーを照射する医療機器「PDレーザー」が保険適用されました。今後、個別化医療も進展、遺伝子情報を調べる診断薬と分子標的薬をセットで用いるケースなども間違いなく増加します。医薬品、医療機器の間にある「保険適用のタイムラグ解消」は、行政、患者、開発企業にとってマイナスは何ひとつありません。
●医薬と機器の保険適用は「ロミオとジュリエット」
医薬品と医療機器の保険適用時期について、厚生労働省幹部はシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」になぞらえ、「決して交わらない」と解説します。新薬と新医療機器の保険適用時期をみると、前者は2、5、8、11月、後者は1、4、7、10月。行政が、開発企業が、どんなに頑張っても、セットで使う医薬品と医療機器が同じタイミングで保険適用されることは、現行制度上はありえないのです。
●再生医療でも同様の問題が
保険適用のズレは、医薬品セットで使う医療機器だけの問題にとどまりません。厚生労働省が11月の審議会で、再生医療2製品の保険適用を認めました。ひとつは、造血幹細胞を移植した後に免疫異常を来たす移植後合併症に用いる「テムセルHS注」、もうひとつは重症心不全患者の心機能の改善を目指す「ハートシート」です。これら再生医療製品は、近年登場した医療技術のため、保険適用されているものも片手で数えるほど。そのため、保険適用のルールが存在しないことから、医薬品、医療機器のいずれかのルールを当てはめることになっています。今回、「テムセルHS注」は医薬品、「ハートシート」は医療機器のルールを当てはめ、いずれも保険適用することになりました。しかし保険適用日は、医薬品のルールを適用した「テムセルHS注」は11月26日からとなりますが、医療機器のルールを採用した「ハートシート」は、来年1月まで待たねばなりません。同じ日の審議会で、同じ再生医療製品として保険適用が認められたにも関わらず・・・・・・。こうした問題にもスポットを当てねばなりません。
●財源の必要のない規制見直しに期待
保険適用の“ズレ”の是正はお金を必要としません。早期の保険診療を望む患者にとっても、一刻も早く市場投入して収益につなげたい企業にとっても福音となります。社会保障費が右肩上がりで増加し、産業振興で打てる対策が限られている行政にとっても、すべてのステークホルダーから歓迎される数少ない対策ですので、早急な見直しを期待します。
【MEジャーナル 半田 良太】