2017.09.01
厚生労働省は7月31日、有効な既存治療が存在せず、生命への影響が重大な疾患に用いる医療機器をいち早く製品化するため、限られた臨床データでも、製造販売承認申請を認める制度を創設しました。医薬品と異なり、医療機器は多種多様。患者数が少ないため、治験の実施が困難というケースは少なくなく、開発に長期間かかってしまう傾向があると常々、指摘されてきました。新制度では、企業は、限られた臨床データでも製造販売承認の申請が可能になります。その一方で、実臨床での使用成績や長期間のデータ収集といったリスク管理計画の策定を、事前に企業に課すことで、早期承認というベネフィットを得つつ、医療機器のリスクにも配慮した形で、早期の製品化を実現する仕組みを構築したといえます。
●希少疾病抱える患者の治療と、産業振興を「両睨み」
条件付承認制度は、再生医療等製品で既に立ち上がっています。再生医療等製品は、ヒトの細胞などを培養・加工したもので、「個別性が高く、品質が不均一」のため、臨床試験の実施が難しく、早期の製品化が困難とされていました。医療分野の成長産業化を目指していた政府は、安全性が確保され、有効性が“推定”されていれば、市販後に、安全性と有効性を確認することを条件に、早期の製造販売承認申請を認めることにしました。
そうした中、医療機器についても、条件付の早期承認を求める声が、産業振興を検討する厚労省の審議会(医療のイノベーションを担うベンチャー企業の振興に関する懇談会)でも上がってきました。
●希少疾病用の医療機器が対象
医療機器は、実際に使用する医師の技量などに、治療成績が左右されることも少なくありません。そのため、新制度では、条件付承認申請の対象となる医療機器の使用を、経験豊富な医師に限定するなど、製造販売後のリスク管理計画の策定が不可欠となります。さらに、対象となる医療機器も絞り込む考えです。具体的には、①生命に重大な影響がある疾患(病気の進行が止められず、日常生活に著しく支障のある疾患)②既存の治療法がない(既存の治療法と比較して著しく高い有効性、安全性が期待できる)③一定の評価を行うだけの適切な臨床データが提示できる④関連学会と連携し、医師の使用条件や、市販後のデータ収集などの製造販売後のリスク管理計画を策定できる⑤新たな治験の実施が困難なことを合理的に説明できる―という要件を、すべて満たさなければなりません。
●市販後のデータで適応拡大も視野
新制度を経て製品化された医療機器は、実臨床での使用成績や長期間のデータ収集によって、期待された長期的な有用性が明らかになれば、適応拡大なども視野に入ります。日本で安全で有効な医療機器に、早期にアクセスすることができるよう、新制度は「小さく生んで、大きく育てる」姿勢で、運用してもらいたいと、期待しています。
【MEジャーナル 半田 良太】