2017.08.01
外科系の100学会が、診療報酬のあるべき姿や個別点数の見直し、新しい医療技術の保険適用などを提言するために組織した、外科系学会社会保険委員会連合(外保連)。その外保連が7月、2018年度の診療報酬の改定で、見直しが必要な喫緊の課題と位置づける最優先項目を明らかにしました。難易度や、人件費などを勘案し、低くとどまっている診療報酬点数の引き上げなどを求める中で、唯一無二の海外メーカー製の医療機器を用いた診療報酬点数(特定保険医療材料価格)についての要望が目立ちました。
●小児用補助人工心臓 治療1人あたり231万円の赤字
外保連は記者懇談会を開き、18年度改定で見直しが必要な診療報酬点数、特材価格などについて、関連6学会(日本耳鼻咽喉科学会、日本人工臓器学会、日本内視鏡外科学会、日本泌尿器内視鏡学会、日本食道学会、日本整形外科学会)を通じて発表しました。そのうち、日本人工臓器学会、日本内視鏡外科学会の主張は、代替製品のない医療機器を巡る訴えでした。
日本人工臓器学会は、小児用の補助人工心臓「Excor」の輸入価格が、設定された特材価格を上回り、病院が赤字に陥っていると主張しました。「Excor」は、独ベルリンハート社の製品。ベルリンハート社から輸入し、国内企業が販売しているのですが、実売価格(血液ポンプなど6製品)の合計が938万円なのに、保険で支払われる特材価格の合計は707万にとどまり、病院側は、1人の治療あたり231万円の赤字となっています。2017年4月末時点で保険で19人を治療しているので、累計約4400万円の赤字となっていると訴え、早急に是正してほしいと要望しました。
●ダヴィンチによる直腸がん切除の保険適用を 既存治療よりも高い評価で
もう一方の日本内視鏡外科学会は、手術支援ロボット「ダヴィンチ」による直腸がんの切除について、保険適用を求めました。「ダヴィンチ」は現在、前立腺がんと、腎臓がんの部分切除に対して、保険が適用されています。学会の主張は、低侵襲で患者のQOL(クオリティーオブライフ)の高い「ダヴィンチ」による直腸がんの切除も、保険診療の対象とし、さらに既存(外科手術、腹腔鏡)治療よりも、高い点数を設定してほしいと呼びかけているのです。
●問題の背景は、国産機器が存在しないこと
この2学会による要望は、要約すると、海外メーカー製で、競合品が存在しない医療機器を用いた治療を、しっかりと評価してほしいということなのです。対抗商品が存在しないため、病院は、実質海外メーカーの“言い値”で買わざるを得ず、コストが高止まりしてしまうことが、根本的な要因です。小児用人工心臓は前述したとおり、実売価格が特材価格を上回っておりますし、ダヴィンチも「本体価格・保守料はどの施設でも定額」(外保連の岩中督会長)だといいます。対抗商品のうちでも特に国産の競合品が存在しないため、病院側は、海外メーカーが主導権を握った交渉を強いられているということなのです。このことは、国内の医療機器産業が、世界最先端の水準にないことが、問題の端緒となっているということです。
外保連の立場からすると、コストに見合った保険点数を求めているだけですので、何ら問題はありませんが、本質的な問題を解決(国産の最先端医療機器を開発)しない限り、こうした問題は、次々と起こる可能性があるのです。国内メーカーの奮起に、一国民として期待したいです。
【MEジャーナル 半田 良太】