2020.04.01
新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るっており、日本でも学校の休校、不要不急の外出や、大規模イベントの自粛など、日常生活に大きな支障をきたしています。厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の蔓延防止の観点から、慢性疾患を抱える定期受診患者への診療、医薬品の処方を行う場合、いわゆる「オンライン保険診療」を認めるとの方針を示しました。厚労省は、情報通信技術を用いたオンライン診療について、「対面診療」の原則を崩しませんが、新型コロナウイルス感染症という想定外の問題が、今後オンライン診療拡大の契機になるのではないか、という見方も浮上しています。
●オンライン診療の規制を緩める方向 20年度の診療報酬改定
厚労省は2020年度診療報酬改定で、情報通信機器を活用したオンライン診療について、対象範囲を拡大する方向で見直しました。
定期的な医学管理を評価する「オンライン診療料」については、対面診療が3か月(従来は6か月)を超えた「再診」の患者に対し、情報通信機器を用いて診療した場合、保険点数を算定できるとしました。さらに、近隣に専門医療機関がないといった事情に限定しますが、難病などの希少性の高い疾患を抱える「初診」の患者が、かかりつけ医と一緒に、遠隔地の専門医から診察を受けた場合を評価する「遠隔連携診療料」という点数も新設しています。さらに、医薬品医療機器等法の改正を受けて全国解禁された、オンラインによる服薬指導について、診療報酬でも足並みをそろえて評価しました。
●新型コロナ感染症へのオンライン診療は容認せず
冒頭、厚労省が、新型コロナウイルス感染症に伴う、慢性疾患患者へのオンライン診療の「保険診療を容認した」と紹介しましたが、当初は「電話等再診料」という一時的な保険診察として評価しただけ。その後、さらなる蔓延を懸念し、これまで認めていなかった、患者が抱える慢性疾患から発症が容易に予想される症状の変化に対し、これまで処方されていない「慢性疾患治療薬」を、電話や情報通信機器を通じた診療で、処方できると踏み込みました。
ただ今回の措置は、あくまで新型コロナウイルス感染症にかかると、重症化することが予想される慢性疾患の患者が、かかりつけの医師を受診することで、新型コロナウイルスの感染者と接触しないで済むように配慮した「一時しのぎ」の臨時・特例的な対応という姿勢を厚労省は堅持しています。
オンラインによる定期的な医学管理を評価する診療報酬点数である「オンライン診療料」の算定も認めてはいません。
●経団連 「対面診療の原則撤廃」を提言
こうした状況を受けた日本経済団体連合会は3月17日、オンラインの場合でも対面と同程度のコミュニケーションが可能になりつつあるとして、「オンライン診療・服薬指導の実施に際しての『対面原則』を撤廃すべき」と提言しました。厚労省が求める、初回の対面診療というオンライン診療の原則を撤廃することは、「新型コロナウイルスのような感染症への対応に際して病院内や薬局内での感染拡大の防止にも有効」との見解も併せて示しています。
医療従事者の働き方改革と、高齢化の進展により、オンライン診療への期待感は今後一層高まるでしょう。新型コロナウイルス感染症という想定外の事態が、オンライン診療の進展スピードに、どのように影響するのでしょうか。オンライン診療は、新たな産業振興ともかかわるテーマでもあります。利便性と安全性を踏まえて、慎重かつスピーディーな検討を期待します。
【MEジャーナル 半田 良太】