2020.06.01
年始から、新型コロナウイルス感染症の流行が進み、不要不急の外出を自粛するよう求める緊急事態宣言が発令されるなど、今も厳戒態勢が続いております。発生源とされる中国や、都市封鎖を続けた欧州諸国、米国などで感染爆発が起きた中、日本では、政府の打ち出す施策が一部で不興を買っている面もあったようですが、諸外国に比べて死亡者数が一定程度に抑えられている状況です。それには複数の要因が絡まっている模様で、これから先に検証されていくでしょうが、そのひとつに、CTなどの画像診断機器があまねく配置(過剰配置?)されているという指摘もあります。
●国内では過剰配置と問題視も「医療費増にはつながらず」
CTをはじめとする画像診断機器は、医療保険制度の中で、過剰配置されていると問題視されることがままありました。とくに2020年度の診療報酬改定議論を振り返ると、財務省が、画像診断機器が過剰配置されていると指摘したことを受け、「高額医療機器の共同利用の推進」をテーマに検討を進めましたが、CTなどの適正配置は見送られました。
財務省などの指摘に対し、医療機器業界は、配置数が多いことで懸念される医療費への影響について、撮影回数は微増傾向を示すも、診療報酬点数が低めに抑えられていると論陣を張り、2017年までの過去5年間の撮影回数増加率は毎年2.3%で安定しており、「医療費増につながっていない」と理解を求めました。医療機関サイドは、「小児の頭部外傷」など、身近な医療機関で画像診断を受けられる「患者の安全・安心の医療が実現している」と訴えたほか、諸外国と比べて、“がんなどが早期発見につながっている可能性”にも触れ、現状維持で着地しました。こうしたやり取りは、過去に何度か繰り返されています。
●4団体 CTによるスクリーニング検査は否定も一定の役割は否定せず
それが新型コロナ禍で、「過剰配置」とやり玉に挙げられていたCTの存在意義が見直されています。
国内では、諸外国と比べてPCR検査の実施件数が少なく、さらに陽性判定率も高くない中、日本放射線科専門医会・医会、日本医学放射線学会、日本環境感染学会、日本感染症学会がまとめた、「新型コロナウイルス感染症に対する胸部 CT 検査の指針(Ver.1.0)」では、「スクリーニングとしての CT 検査は推奨できない」とする一方、「臨床症状、地域の感染状況を鑑み、新型コロナウイルス感染症が強く疑われ、PCR 検査で確定できない場合であって、疾患の進行するリスクが高いと判断される場合」などでの使用を視野に入れています。基礎疾患を持つ疑い患者などに用いることで、治療の優先順位付けなどに一役買っているようです。
●確定診断はPCR CTは重症化や蔓延防止に一役
新型コロナウイルス感染症は、かなり多くの無症状者が存在するほか、基礎疾患を持っていると急激に症状が悪化するといわれており、まだまだ未解明な部分が多いです。新型コロナウイルス感染の特徴である「すりガラス状の所見」などがない場合もあるので、初期の肺炎などの異常所見を見つけられるCTの果たす役割は一定程度あり、身近な医療機関に配置されているメリットも無視できないでしょう。
少子高齢化の進展で、医療保険財源は厳しさを増しているので、政府が医療費を節約しようとする流れは止まらないでしょう。そうした中で、配置数(供給)が過剰な撮影回数増(不要不急の需要)につながるということがないようチェックすることが前提になりますが、CTの配置が、安全・安心の医療につながるという側面も含め、バランスの取れた議論をしていく必要があるのでしょう。
【MEジャーナル 半田 良太】