2014.02.01
早いもので、新年を迎えて1ヶ月が経過しました。テレビでは、お正月モードのバラエティー番組ははるか昔、大学入試センター試験に臨む受験生の緊張した面持ちを映し出していました。昨今の受験生のトレンドは、理工学部や医学部などの「理系学部」を希望する割合が高く、“手に職をつけたい”という意向が強いようです。バブル崩壊後の失われた20年で育った彼らは、将来を見据えた堅実路線を歩んでいるのでしょう。地に足の着いた彼らが、技術立国日本を、将来にわたって支えてくれるでしょうし、医療機器業界に飛び込み、日本経済を牽引する産業に引き上げて欲しいとも期待しています。
●メディカル・デバイス版スティーブ・ジョブズ養成に本腰
ただ自分のことを棚にあげて恐縮ですが、石橋をたたいて渡るような受験生の堅実路線を危惧する思いもあります。懸念しているのは、発想力の欠如。アイフォンや3Dプリンターといった、革新的な製品が、日本から生まれていないことを考えると、“地道さ一辺倒”では、不安です。 日本の医療機器業界に眼を移すと、日本が持つ“ものづくり”の力を活かしきるため、新しいアイディアを生み出す“人づくり”に傾注している状況にあります。「メディカル・デバイス版スティーブ・ジョブズ」を養成するため、大学教育との連携を深めていく考えで、準備を進めている段階です。
●学部教育の相互乗り入れや単位取得も視野
政府もこうした医療機器業界の考えに理解を示しており、一足先に、大学教育でのユニークな人材養成に乗り出しております。文部科学省は2013年度から、日本の医療産業の活性化に貢献する人材養成に向けて10大学をピックアップし、最大5年間補助金を支給します。このうち、医療機器の開発に力を注ぐ、いくつかの大学を紹介したいと思います。
まずは、医学部、工学部で、学生・教員が相互乗り入れした教育体制を敷いた長崎大学。医学部の学生が工学博士の学士号を取得できます。3Dプリンターを用いた医療機器の企画などや、海外留学チャレンジする教育プログラムも採用しています。
次に、医療現場の発想やニーズを、医療機器開発に活かしきれていないという課題に着目したのが東京女子医大。医療現場のニーズくみ上げから試作品の開発、製品化するための薬事承認手続きまでを把握できる、「医療機器開発リーダーの育成」を大学院教育の柱に据えます。
●専門化から総合化、アイディア勝負の時代へ
これらの大学が目指しているのは、専門特化型人材養成からの脱却といえます。効率化の観点から、“餅は餅屋”にまかせるのではなく、異分野に足を踏み入れることで、新たな発想を生み出そう、総合的に対応できるリーダーを養成しようという試みといえます。これからの日本を背負っていく受験生には、「手に職があると、就職しやすい」というせせこましい発想ではなく、「新しいアイディアで、世界の人に貢献しよう」という大きな志を持って、羽ばたいてもらいたいものです。将来、大化けする可能性を秘めた医療機器業界はいかがでしょうか。やりがいはあると思います。
【MEジャーナル 半田 良太】