2015.05.01
厚生労働省が、医療機器の早期導入に向け、アクセルを踏み込んでいます。日本では、医薬品と医療機器を同一基準で規制してきたため、機器の審査に時間がかかり、欧米などに比べて最先端の製品にアクセスできませんでした。そのため厚労省は、医薬品と機器の規制を切り分けた「医薬品医療機器等法」に衣替えしたほか、機器の審査にあたるPMDA(医薬品医療機器総合機構)のあり方を見直し、①審査担当人員の増員②機器の規制に不慣れな大学やベンチャー企業から相談を受ける事業の拡充-を図り、革新的機器を迅速に患者に届けられるよう、改善を図ってきたことは、ご紹介済みです。
厚労省はその動きをさらに加速させるため、学会や患者団体からの要望があれば、欧米で承認されていない、医療ニーズの高い機器についても、早期導入を促す方向で、既存制度の見直しを決めました。 欧米で認可されている機器が、長年国内で使えないという、いわゆるデバイス・ラグ解消にとどまらず、世界で最も早く機器が使えるようにするため、厚労省は、“安全性”と“迅速性”という二兎を追う姿勢を鮮明に打ち出しました。
●ラグ解消から、世界初の製品化へシフト
厚労省は2006年に、「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」を発足させました。この検討会は、重篤な疾患を診断・治療する機器が、国内へ導入されていない状況を打破するために設けたもの。 具体的には、欧米で既に製造販売している機器について、学会などが「国内に早期導入すべき」と要望し、専門家が集う検討会が「適切な要望」と認めれば、PMDAによる優先的な審査という“ニンジン”をぶら下げ、該当品目を開発する企業を募るという仕組みを作りました。患者数が少ない重篤な疾患や、新しい治療法へのアクセスを早めるため、一定の効果をあげてきました。
厚労省は今回、この仕組みを改め、更なる一歩を踏み出します。対象となる機器を、「欧米で製造販売していないもの」にまで拡大。世界に先駆けた機器の実用化に道筋をつけるべく、政策の舵を切りました。
●環境整備進める厚労省 次は企業側が成果を示す番か
厚労省が、こうした対策を矢継ぎ早に打ち出すのは、医療機器産業を経済牽引役に育成したい安倍内閣の意向を汲んでのことです。ただ厚労省は、安全性を犠牲にしてまで、迅速性を優先することはできませんので、知恵を絞りながら歩を進めています。具体的には、欧米で認可されていない製品をすべて優先的に審査するのではなく、①優れた成績が論文発表されているもの②国内で保険診療との併用が認められている一部の先進医療技術(機器)で、一定の有効性や安全性が確認されているもの―などに限定します。安全性と迅速性という二律背反する課題に一定の答えを出した厚労省。この苦労に対し、医療機器メーカー、業界が世界初の製品化という形で応える番ではないでしょうか。
【MEジャーナル 半田 良太】