2016.12.01
AI(人工知能)や、様々な部品や製品がインターネットでつながるIoT(モノのインターネット)など、
ICT(Information Communication Technology=情報伝達技術)が進展する中、医療分野でもこうしたテクノロジーの活用を促す動きが活発化しています。政府は、データの標準化やビッグデータの活用などに取り組み、医療従事者の負担軽減や、関連産業の育成につなげていく考え。2018年度の診療報酬・介護報酬改定で、ICTを駆使した取り組みを、積極的に評価する方向性を打ち出しました。
●「供給者目線」から「患者・国民目線」のICT化にシフト
これまで、医療分野でのICT活用は、個々の医療機関での取り組みや、特定のエリアでの限定的な医療機関連携にとどまっていました。つまり“ICT化のためのICT化”が多く、誤解を恐れずに言うと、ベンダーの意見に沿って投資し、互換性を持たずにガラパゴス化していたといえます。
厚生労働省は、こうした状況を打破するため、「供給者目線」ではなく「患者・国民目線」のICT化に向けて、政策の舵を切ります。具体的には、①ビッグデータの活用やAIによる分析②ICTを活用した遠隔診療や見守り③切れ目ない診療を受けられる医療情報ネットワークの構築―を目指します。
●AIでは、画像解析によるがんの発見も
そのインセンティブが、公的保険での評価です。これまで診療報酬は、対面診療を原則としてきたため、ICTの活用した評価については、限定的な対応にとどめてきました。とくに遠隔診療については、専門知識を持った医師への画像診断の読影依頼や、患者への電話による再診のみでしたが、今年4月、心臓ペースメーカーを装着した患者への「遠隔モニタリング」を評価するなど、ICTの活用を容認する姿勢に転じつつあります。
今後はその流れを加速します。とくにAIについては、医師の業務効率化、負担軽減といったキーワードと合致すると考えているようです。AIが膨大な画像データをスクリーニングし、がんの特徴的な画像の特定や、がんの疑いのある画像のピックアップにつなげることができれば、医師、患者にとっても福音になることから、診療報酬での評価に値するとも考えられます。
IoTの活用については、すぐに診療報酬と結びつけることは難しいかもしれませんが、すでに産業界が動き出しています。医療機器メーカーは、機器に搭載したセンサーで異常値を感知すると、故障する前にメンテナンスするという仕組みを作り、医療機関へのサービスを始めています。
●AI活用したケアプラン作成も視野
介護については、ロボット技術の活用が視野に入っています。すでに診療報酬では、介護支援ロボット「HAL」を評価していますが、人材不足が続く介護現場でも、こうしたロボット技術の開発を促すため、介護報酬をインセンティブとする考えです。AIをケアプラン作成で活用できるのではないかとの見方も広がっています。
●オール厚労省で、ICT活用を検討へ
厚労省は、ICTの活用に向けて、情報化を促す部署を筆頭に、診療報酬、産業振興を所管する部署などを一堂に集め、検討を開始しました。AIやIoTなど、様々な可能性を秘めるICTを医療分野でどのように活用できるのか。オール厚労省として検討を進めていくようです。
【MEジャーナル 半田 良太】