2017.03.01
2018年度の診療報酬改定にあわせ、特定保険医療材料の価格設定ルールの見直し(保険医療材料制度改革)議論もスタートしました。高額な抗がん剤「オプジーボ」に端を発した、薬価の毎年改定と歩調を合わせるとみられていた、特材の毎年改定については、市場規模が小さく、価格調査の手間が膨大なことを理由に、薬価と同様の見直しは難しいとの方向性が示されました。厚生労働省は、医薬品医療機器等法を施行し、医療機器の特性を踏まえた「製造販売の規制」を採用しましたが、保険制度でも、同様の考え方で見直しを進めていく考えです。
●膨大なアイテム数の特材の価格は機能に応じてグルーピングされる
特材は、製品数が20万超ともいわれており、医薬品の約1万6000と比べ、膨大なアイテム数をほこります。一方で、特材の市場規模は約1兆円弱。医薬品の市場規模約9兆円からみると、ごくわずかといっても過言ではありません。そのため、医療保険上の評価は、医薬品のように銘柄ごととするのではなく、同じような製品を1つのグループとしてまとめる「機能区分」という考え方を採用。同じ機能区分にグルーピングされると、同一の公定価格で保険償還されることになります。
●特材価格は、他社の販売価格次第で急落するリスクはらむ
医薬品や特材の公定価格は、医療機関などへの販売価格を調べ、2年に1回引き下げることを原則としています。医薬品は原則銘柄別で価格設定しているため、自社の販売価格に応じて引き下げ幅が決まりますが、特材は機能区分制度を採用しているため、安売りした他社の価格に引きずられて、思いもよらない形で自社製品の価格が急落するというリスクをはらんでいます。
機能区分制度は、アイテム数の多さという特材の特性を踏まえた仕組みで、価格見直しの事務作業効率化などを主眼に採用されたものですが、製品をきめ細かく評価できないという問題点が常々指摘されています。例えば、医師にとって使い勝手の良い工夫した製品があったとしても、特徴のない同じ機能区分の製品が安値攻勢をかけていれば、自動的に公定価格が引き下げられるというジレンマを抱えているのです。こうした問題点に着目した厚生労働省は、特材でも銘柄別に評価する「機能区分の特例」という制度を2014年度に創設。高いイノベーションの製品と、国内で未承認のままたなざらしになっている「医療ニーズの高い医療機器」について、一定期間銘柄別の評価をすることにしました。さらに、ニーズの高い製品を開発した企業が、次に開発する製品も、「機能区分の特例」として、銘柄別に評価するというインセンティブまでつけたのです。
●市場規模が小さく、希少疾病用機器などの開発が8年超たなざらしに
ただ先にも触れました通り、特材の市場規模は医薬品の10分の1程度にとどまるため、とくに医療現場で医療ニーズが高いとされる小児用や、希少疾病用の医療機器については、開発が滞ったままです。実際、厚生労働省の審議会が、国内への早期導入が必要と選定した製品が、8年以上開発されずに放置されたままになっているのです。
●業界に求められる“積極的な提案”
それでは、医療ニーズが高いにもかかわらず、市場規模が小さいために開発されない特材などをどのように開発すべきか―。厚生労働省は、さらなる保険上のインセンティブを付与することで、こうした特材を国内で早期導入する方策を、2018年度から新設する方向で検討するとしています。ただ妙案があるのかどうかは疑問です。同じ課題を抱えていた製薬業界は、国内で未承認・適応外の薬を解消するための原資とする意味で、新薬の評価に比重を置いた「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」という枠組みを提案。一足先に実現させました。医療機器業界も、「こうした仕組みにしてくれれば、希少疾病用の製品が開発できる」という、機器の特性を踏まえた、積極的な提案が求められているのです。
【MEジャーナル 半田 良太】