2018.02.01
新年を迎え、今年4月に控える診療報酬改定の概要が固まりつつあります。今回の改定は、地域包括ケアシステムの構築を後押しするため、かかりつけ医を中核に据え、病院や診療所、介護施設などとの「連携」を評価することや、急性期医療を担う7対1、10対1一般病棟入院基本料の評価体系を、入院患者の診療実績に応じた形に改める点などが、ポイントとなりそうです。
そうした中、診療報酬について審議する中央社会保険医療協議会は、粒子線治療について、頭頸部がんと、陽子線による切除非適応の骨軟部腫瘍(重粒子線はすでに保険適用済み)への適用拡大について、「十分な科学的根拠を有する」と判断。前立腺がんについても既存治療と同等と評価するなど、保険適用を視野に入れるような書きぶりとしています。
●2年前は、注文付きで2疾患への保険適用を了承
粒子線治療は16年度の診療報酬改定で、「小児がんの陽子線治療」「切除非適応の骨軟部腫瘍の重粒子線治療」について、保険適用済み。特に小児がんなどは、他に有効な治療法がないため、優先的に保険適用したといっても過言ではなく、既存治療と比べて有効性と安全性が高いことを立証しきれたとは言えない状況でした。さらに、保険点数も最大で約240万円と高額のため、「費用対効果評価による検証を行うべき」と、注文付きの保険適用だったわけです。
●前立腺がんへの治療 既存X線治療と同等が妥当ではないか
今回、適用拡大が検討されている疾患のうち、頭頸部がんと、陽子線による切除非適応の骨軟部腫瘍については、保険導入に向けて、十分科学的根拠を有すると、データ上でも立証されたので、保険適用は妥当でしょう。しかし、厚労省が、費用対効果を検証する枠組みを整えきれなかったため、検証はできずじまい。それを考慮すると、高い点数をつけるかどうかについては、慎重な判断が不可欠と言えます。一方、前立腺がんに対しては、既存のX線治療と同等の有効性しか立証されていないことを考えると、仮に保険適用とするならば、既存治療と同じ点数とすることが妥当ではないでしょうか。
●ダヴィンチも12技術が適用拡大の方向 焦点は点数設定
4月の診療報酬改定では、ダヴィンチによるロボット手術の適用も、大幅に拡大される見通しとなりました。粒子線治療と同じく、既存治療と比べ、有効性、安全性が同等とされるものも含めた12技術について、保険適用が妥当と結論付けています。こうした判断を下した厚労省の専門家会議では、「優越性を示すまでに至っていない技術については、その診療報酬上の評価は、既存技術と同程度とすることが適切」との委員のコメントつきで、中医協に報告をあげています。
●特材制度で新設の市販後再評価制度を技術料にも準用すべき
4月からの特定保険医療材料(特材)制度改革では、薬事承認段階で判断できなかった特材の有効性を市販後に立証できた場合には、企業が事後的に公定価格の引き上げを求めることができる、「使用実績を踏まえた再申請制度」を創設しました。粒子線治療やダヴィンチによるロボット手術などの技術料についても、こうした制度に倣って、「保険適用時にはほどほどの評価で、有効性が立証できた段階で点数を引き上げる」といった、柔軟性を持った評価体系を導入すべきではないでしょうか。
【MEジャーナル 半田 良太】