2018.05.01
2018年度診療報酬改定が実施され、全体で▲1.19%(診療報酬本体+0.55%、薬価▲1.65%、特定保険医療材料▲0.09%)と実質的に3回連続のマイナス改定となりました。その内容を見てみると高齢化の進展という厳しい財政状況下で、地域包括ケアの推進に向け、メリハリをつけた改定になっています。医療機器関連の診療報酬点数をみると、専門医が、CTなどの画像診断を適切に管理した場合に算定できる「画像診断管理加算」が見直され、新たに画像診断の際に照射する「放射線量」を管理し、最適化を図った場合を評価する上位区分の点数が新設されました。関係者は、「医療被ばく線量管理元年」との声をあげており、注目を集めています。
●CT設置台数世界一の日本 被ばく対策は急務も進まず
日本は、人口当たりのCTなどの画像診断機器の配置が世界一です。その結果、がんなどの早期発見につながっているとされる一方、被ばく量も多く、その管理の必要性が叫ばれつつ、手付かずの状況が長く続いていました。2015年に、日本医学放射線学会など、関連学会・団体から作る「医療被ばく研究情報ネットワーク」が、診断参考レベル(DRL)をとりまとめ、被ばく管理の第一歩を踏み出しました。ただDRLは、撮影部位ごとに、照射する放射線量の参考値を示しただけ。臨床現場で遵守しなければならないといった、強制力はありません。そのため、最適な放射線量を照射するところもあれば、過剰照射になってしまっているところもあり、全国的に被ばく線量の最適化が進んでいるとはいえませんでした。
●診療報酬点数で特定機能病院に被ばく管理義務付けへ
そうした中で、4月の診療報酬改定では、経済的なインセンティブを付与し、放射線量管理を進める動きが出てきました。これまで2段階評価だった「画像診断管理加算」について、特定機能病院を対象とした最上位区分「加算3」を新設。300点の高額な診療報酬点数の算定を認める代わりに、DRLを活用して、適切に被ばく線量を管理、記録することを義務付けるものです。日本医学放射線学会は、特定機能病院の5割が「加算3」を算定するとの見通しを示しており、冒頭の言葉どおり、2018年度は「医療被ばく線量管理元年」を迎えたといえるでしょう。
●今後は一般的な病院への対象拡大も予想される
さらに「頭部MRI撮影加算」を算定する医療機関にも、4月から、CTなどの画像診断を行うにあたっては、前述の「加算3」と同様、適切な被ばく線量管理、記録を求めています。厚生労働省は、まず頭部MRI撮影加算を算定する高度な病院と特定機能病院から、被ばく管理の最適化をスタートさせ、2020年度以降に、一般病院にも広げていく戦略をとることが想定されます。何はともあれ、全国であまねく、最適な線量で、画像診断が受けられることになることは、患者にとってプラス。世界最高水準の医療を、低侵襲で受けられる流れは大歓迎といえます。
【MEジャーナル 半田 良太】