2018.08.01
「日本発の革新的な製品を開発・販売し、医療機器産業を自動車や電機に代わる、将来の日本経済けん引役に育成する」-。第二次安倍晋三政権は、高い期待を医療機器業界に寄せ、医薬品と同一に規制していた薬事法を抜本的に見直したほか、医療現場とモノづくり力のある異業種の中小企業をマッチングするなど、様々な形で産業育成を後押ししていることは、このコラムでも紹介して参りました。とはいえ、先行する欧米企業の背中はまだ遠く、地道な努力が内資系の医療機器メーカーに求められます。
医療機器業界は、革新的な医療機器創出は一足飛びには出来ないことから、まずイノベーションを生み出す人材を育成するという土台作りに力を注ぎ、2015年10月に、スタンフォード大の人材育成プログラム「バイオデザイン」に基づき、大阪大学、東京大学、東北大学で教育を開始しました。いわゆる理系の人材育成はスタートしているわけですが、販売や海外展開などを主に担う、優れた文系人材の確保は難しいようです。とくに新卒の文系学生は、医療機器業界を見向きもしない傾向があることが、医療機器センターの調査で明らかになりました。
●文系の就活生 医療機器業界は「不人気業種ワースト2」に
医療機器センターが昨年8月に実施したアンケート調査によると、医療機器業界は、理系の学生にこそ一定の人気を誇る一方、文系の学生の興味・関心は、「金融・保険」「サービス」「広告・メディア」などに集中。医療機器業界の人気は、全産業の中でワースト2となっているといいます。そのうち、医療機器業界に興味があると回答した学生ですら、「敷居が高い」「専門知識が必要」「仕事が忙しい」といった“負のイメージ”を抱いていることもわかり、「認知度が低く、地味でハードな仕事」との誤解が生じている模様です。
●営業・販売担う新卒文系人材の確保に苦戦
内資系の医療機器メーカーは、新卒の文系学生の確保に、質、量ともに苦戦しているようです。外資系メーカーは、昔から、即戦力の確保を目指して、中途採用にも力を入れてきた経緯があり、さほど問題視していないようです。革新的な製品の開発と、営業・販売は、医療機器産業の飛躍に向けて、車の両輪。とくに政府は、日本が力を注ぐ、粒子線治療機器と機器のメンテナンスなどをセットで海外に展開する「パッケージ型インフラ輸出」なども促しており、営業・販売を主に担う優秀な文系人材を、喉から手が出るほど欲しがっているはずです。
●文系人材確保に向けたホームページ「医機なび」がスタート
そうした声を聞きつけた、医療機器センターは6月から、就職活動中の学生に向けて、医療機器業界の魅力を発信するホームページ「医機なび」(http://www.iryokiki-navi.com/)を立ち上げました。「規制にがんじがらめの、地味な産業」という負のイメージを払拭すべく、業界で働く若手社員へのインタビューなどを通じ、(1)業界の魅力・やりがい(2)成長産業としての期待感の高まり(3)製品の研究開発ストーリー(4)医療機器の恩恵を受ける患者・医師からの感謝の声―などを紹介。就職活動中の学生に目を向けてもらうよう、工夫を凝らしています。
【MEジャーナル 半田 良太】