2018.09.03
医療用医薬品1万6000品目に比べ、特定保険医療材料(特材)は20万品目ともいわれており、膨大なアイテム数となっています。そのため特材は、医薬品のように製品ごとに公定価格を設定せず、同じ機能を果たす製品をグルーピングし、同じ公定価格を設定するという、「機能区分」方式を採用しています。具体的には、医薬品が1万6000の製品ごとに、薬価を設定していることに対し、特材は20万品目を、約1200の機能区分にまとめ、グループごとに公定価格を設定しています。
特材の公定価格は2年に1回、市場での値引き状況を調べ、価格を引き下げますが、機能区分方式では、自社の製品をほぼ公定価格で販売していたとしても、仮に他社が安売りした場合、道連れで、公定価格の引き下げを受けてしまいます。医療機器メーカーや業界団体は、こうした機能区分方式の不合理を訴え、医薬品と同様、製品ごとの価格設定を要求していますが、厚労省は、膨大なアイテム数がある特材で、1品目ずつ価格をつけることは現実的ではないとして、機能区分方式を堅持する方針です。
ただ、企業・業界側の考えにも、一定の理解を示しており、革新的な特材を開発した場合には、一定期間、その品目だけの機能区分を作り、他社の類似品の販売価格に影響されないような仕組みを構築するなど、イノベーションに配慮した制度設計に工夫を凝らしています。コラムでもいくつか紹介してきました。
●機能区分合理化で8万円の引き下げをくらった製品も
少子高齢化により、医療保険財政は厳しさを増すばかり。特材でも、イノベーションを評価するのであれば、医療費削減につながる制度改革も断行しなければならないのです。そこで2016年度改定から本格化しているのが、「機能区分の合理化」による、価格の適正化です。機能区分の合理化を簡単に説明すると、今まで別々の機能区分だったものを、一つの機能区分に統合するもののこと。合理化の対象となるのは、「体内で用いられる部位は異なるが、製品構造が類似している機能区分」や「製品の本質的な機能に差異が見られない機能区分」などとされています。
5月に行われた日本整形外科学会では、靭帯などを骨に固定する「インターフェアレンススクリュー」(13万1000円)が、同様の機能を持つ縫合糸付きの固定具「スーチャーアンカー」(4万3300円)と、一つの機能区分に統合(5万3000円)されたことに、「手術手技そのものが違うのに、合理化はおかしい」と不満が上がっていました。1万円の引き上げとなる「スーチャーアンカー」を販売する企業は歓迎でしょうが、8万円弱価格が引き下げられる「インターフェアレンススクリュー」を販売する企業の経営への負のインパクトは非常に大きいものでした。もう少し腰を据えて、合理化議論をすべきだったかもしれません。
●イノベーション評価と医療費削減のメリハリが必要
厚労省は、イノベーションの評価を求めつつ、既存の製品の機能区分での価格引き下げは勘弁してほしいという企業・業界姿勢を容認することはできないとしています。つまり、「メリハリ」をつけた、制度改革は不可欠としており、企業・業界側にも受け入れるよう求めています。
厚労省の姿勢は、至極当然のことでしょうが、その手法には一考の余地があるかもしれません。機能区分の合理化については、その対象となる機能区分や、概念は一定程度浸透していますが、保険適用されたばかりものが対象になる可能性もあります。今後はよりルールを明確化する必要があるのではないでしょうか。例えば、「保険適用から一定期間経過したものを対象にする」「合理化の対象となる可能性のある機能区分を、2~3年前に通知する」といったことです。そうすれば、合理化の必要性や、妥当な価格設定などが行いやすくなるのではないでしょうか。
【MEジャーナル 半田 良太】