2019.01.04
2019年10月の消費税率10%への引き上げに伴い、診療報酬や特定保険医療材料(特材)、医薬品の公定価格を同時に見直すことが、厚生労働相と財務相の2019年度予算の大臣折衝で、正式に決まりました。医療は非課税のため、診療報酬などの公定価格に、消費税引き上げ分2%の上乗せが必要になる為です。特材と医薬品については、値引き販売にあわせて価格を引き下げたうえで、2%分を上乗せすることとなりました。厚労省は、10月の改定について、増税分を反映する「臨時的な改定」と位置づけており、制度の抜本的な見直しを見送りましたが、54円未満の特材は、現行のルールでは、消費増税分を転嫁できないため、部分的な見直しが行われることになりました。
●銭単位を“切り捨て”から“四捨五入”に
医薬品は、1円未満の「銭単位」で薬価が設定されていますが、特材は「円単位」。そのため、54円未満の特材は2%を上乗せしても、1円未満となってしまい、銭単位はすべて切り捨てられていました。このルールは、税率5%から8%への引き上げ時にも適用されており、単価の安い特材を製造する医療機器メーカーにとって、今回もルールが見直されなければ、合計5%分の引き上げが見送られてしまうということになります。そのため医療機器業界は、医薬品同様、「銭単位」の価格設定とするよう要望しましたが、厚労省は、54円未満の特材に限定し、銭単位を四捨五入するルールを採用するとしました。
●27円以上の特材は増税分転嫁の可能性
今回の四捨五入ルールの採用で、理論上、単価27円~53円の特材は、増税分2%以上の上乗せを受けられる可能性があります。医療機器業界は、四捨五入ルールが設定されたことを歓迎していますが、例えば、糖尿病患者向けのインスリン製剤の注射器や注射針など単価が10円台にとどまる特材は、2回連続切り捨ての憂き目にあってしまいます。日本の社会保障を考えると、消費税率が10%のままで据え置かれる可能性は低いでしょうから、次々回の引き上げ時には、特材の「銭単位」の価格設定を真剣に考えるべきでしょう。
●医薬品に倣った「基礎的特材」の価格維持も検討すべき
それとは別に、医薬品には、一定の条件を満たす、医療上不可欠な、低い単価の製品を安定供給するため、薬価を維持する「基礎的医薬品」という制度があります。医療用麻薬や抗生物質などがその指定を受けており、値引き幅が一定以内であるといった条件などをクリアすれば、改定前の薬価を維持するという仕組みです。
今回の増税対応でも、単価が安い特材の存在がクローズアップされましたが、そのような特材ではルールの狭間で十分な増税対応が取れませんでした。そうした特材の多くは、医療上必要性が高いといえます。2020年4月には、通常の診療報酬改定や特材制度の見直しが行われるわけですから、医薬品の制度に倣った「基礎的特定保険医療材料」という価格維持制度の導入を検討してみても良いのではないでしょうか。
【MEジャーナル 半田 良太】