2019.02.01
昨今の技術革新の波が、医療業界にも変革をもたらそうとしています。とくにAI(人工知能)などを用いた病気の診断補助の分野では、各種研究が進んでおり、昨年12月には、サイバネットシステムが、昭和大、名古屋大と連携して共同開発していた、AIを搭載した大腸内視鏡診断支援ソフト「EndoBRAIN(エンドブレイン)」が、医療機器プログラムとして製造販売承認を取得。保険適用がどうなるのかは、いまだ見通せませんが、国内の医療現場での実用化に向け、あと一歩というところまで、前進しています。
●AIが「切除すべきポリープである可能性」をパーセンテージ表示
エンドブレインは、オリンパスの超拡大内視鏡で撮影した画像から、ポリープを、(1)切除する必要かある腫瘍性のもの(2)その必要のない非腫瘍性のもの―を推測し、腫瘍の可能性をパーセンテージ表示で医師に知らせます。臨床性能試験によると、正診率98%、感度97%の精度で、「腫瘍性ポリープ」と「非腫瘍性ポリープ」を識別することができました。つまり、専門医に匹敵する正診率をたたき出し、非専門医の正診率を上回る結果を残したということです。エンドブレインは、医師の診断を補助・支援する医療機器として、製造販売することが認められました。こうした画像診断支援のプログラムは、開発競争が熾烈を極めており、今後相次いで登場することが予想されています。
●AI用いても「判断の主体(責任)は、当面は医師」 厚労省
厚生労働省も歩調を合わせるように、この直後に、AIを用いた診断、治療の支援を行うプログラムの利用が増加していくことを踏まえ、医療現場に1本の通達を出しました。その内容は、「AIは診療プロセスの中で医師主体判断のサブステップにおいて、その効率を上げて情報を提示する支援ツールに過ぎない」「判断の主体は当面は医師」としました。つまり、AIが誤っていたとしても、医師がそれを活用する段階でそれを見抜かねばならないとし、医師を“最終的な判断の責任者”と整理したのです。
●米ではAI診断がすでに認証
米FDA(食品医薬品局)は昨年4月、AIを用いて糖尿病性網膜症を“自動診断”するシステム「IDx-DR」(米IDx Technologies社製)を、すでに認証しています。つまり、医師でなくAIが、糖尿病性網膜症かどうかを診断できるということです。日本とは規制の考え方や置かれている環境も異なりますので、一足飛びに“AI診断”とはいかないでしょうが、AIが医療分野で本格的に活用される時期に差し掛かっていることは間違いありません。近い将来、日本でも精度の高いAIが登場したときに、医師の診断“支援”ではなく、“AIによる診断”として認めるのかどうかということが議論になるでしょう。さらに医療機器産業振興の観点から、革新的なAIを医療保険上でどのように評価するのかということも、避けられないでしょう。医療安全と、技術革新の評価という難しい課題に直面することになります。
【MEジャーナル 半田 良太】