2019.03.01
財務省が、国内の高額医療機器(CT、MRI)について、「OECD諸国の台数を上回っている」と過剰配置を問題視し、是正を求めています。「需要(医療機関が画像診断機器を購入すること)が供給(医療機関が必要性の低い患者にも画像診断を実施すること)を生む」として、不要な機器の購入による医療機関の経営悪化と無駄な医療費増を防ぐべきとのスタンスです。そうした状況を解消するため、医療機器の新規購入や買い替えの際、都道府県や医療関係者間の協議を経るといった「規制」を導入すべきと提案しています。厚生労働省は、財務省の提案を横目でにらみつつ、外来医療の機能分化・連携という視点で、「共同利用することが相応しい医療機器の選定」に向けた議論をスタートし、今年3月までに結論をとりまとめるとしています。
●CT、MRIの過剰配置の是正が医療費抑制策のメニューに載る
財務省は、ひっ迫する医療保険財政に強い危機意識を持っており、医療費抑制を求め続けています。最近では、政府の経済財政諮問会議などとも呼応。現行では2年に1回の薬価や特定保険医療材料価格の引き下げを、毎年実施するよう迫ったほか、社会保障費の伸びを高齢化による自然増の範囲内にとどめ、技術革新による医療費増を容認しない姿勢も打ち出したりしています。実際、そうした提案は、厚労省でも前向きに検討される流れができている状況です。今回は、高額医療機器の過剰配置を問題視しており、関係者もその行方を見守っている状況です。
●CT、MRIなど機器7種の設置台数が明らかに
厚労省は1月、「共同利用することが相応しい医療機器の選定」を検討する会議の席に、
(1)マルチスライスCT(2)1.5~3テスラのMRI(3)マンモグラフィ(4)リニアック・マイクロトロン(5)IMRT(強度変調照射)(6)PET-CT(7)ガンマナイフ・サイバーナイフ―の7種について、病院、診療所の保有台数を公表。エリアごとに台数を“可視化”し、地域での共同利用を促す方策や、機器の新規購入、買い替えについて、地域で協議する仕組みを提案しています。さらに、「粒子線(陽子線、重粒子線)治療装置やダヴィンチが過剰配置となっているという声も耳にしている」との問題意識も持っており、必要に応じて対象となる機器を追加していく可能性も否定していません。
●諸外国と比べて多いCT、MRI 功罪を検証したうえで議論を
諸外国に比べ、CT、MRIの設置台数が多いことは事実です。ただ数年前の中央社会保険医療協議会の議論では、「多くの画像診断機器が医療機関に設置されているため、がんの早期発見・治療につながっている」との声が医療サイドからあがっていました。設置台数の多さは、デメリット(医療費増)だけなのか、メリット(早期発見・早期治療)もあるのか。それを十分吟味したうえで、議論を進めることも肝要ではないでしょうか。
また診療報酬点数では、64列超のCT、3テスラ超のMRIなどについて、共同利用すると高い点数の算定を認めていますが、現場では「使いづらい」という声も上がっているようです。こうした点数を算定しやすくするなど、診療報酬上でのインセンティブもうまく組み合わせながら、共同利用を進めるという視点も欠かせないでしょう。
【MEジャーナル 半田 良太】