2019.10.01
1回利用したら廃棄しなければならない医療機器(SUD=single-use device)を、使用後に分解・洗浄・滅菌して、再び利用できる新制度が創設されてから2年、初めて製造販売承認を取得する製品が登場しました。日本ストライカーが、ジョンソン・エンド・ジョンソンの心臓カテーテル用電極(EPカテーテル)「ラッソー2515」を再製造する認可を、厚生労働省から取得しました。日本ストライカーは今後、医療保険制度での利用を見据え、公定価格の設定を求める方向で準備しており、間もなく医療現場で使われることになります。
●SUD再製造は17年7月から制度創設
日本ではこれまで、使用済みのSUDを、病院内で滅菌して再利用する事例が散見されていましたが、不十分な滅菌などによる感染リスクや、医療機器の安全性の観点から、問題視されてきました。そこで厚生労働省は、米国や欧州での事例を参考に、使用済みSUDを分解、洗浄、滅菌して、再利用できる制度を2017年7月に創設。厚労省が定めた安全基準を遵守したうえで、医療機器メーカーの責任で、使用済みSUDを再製造することを許可。医療廃棄物の削減や、医療費抑制につなげたい意向を示しています。
●EPカテの再製造 国内では1回限り
今回承認された「ラッソー2515」の再製造品は、不整脈のアブレーション(焼灼)を行う際、その部位を特定するために用いるEPカテーテルと呼ばれるSUD。使用済みのEPカテーテルは、そもそも感染リスクが低く、再製造しやすい製品として注目されていました。
現在の公定価格は、冠状静脈洞型7万9500円、房室弁輪部型17万7000円。J&J社製以外にも複数のEPカテーテルが存在しますが、日本ストライカーは、最も売れ筋である「ラッソー2515」の再製造を行うということです。なお海外では、EPカテーテルの再製造について、複数回の分解・洗浄・滅菌を認めていますが、日本ストライカーが8月に取得した国内での製造販売承認は、1回限りとなります。
ちなみに「ラッソー2515」の再製造品は、米国で2008年8月から、欧州で16年8月から使用されています。
●注目は再製造SUDの価格設定ルールに
今回の承認を受け、医療現場からは、「再製造品は、オリジナル品の何割引きの価格設定になるのか」との関心が寄せられており、病院経営の観点からも、期待感が高まっています。現在、再製造SUDの価格設定ルールは存在しないため、評価の在り方から議論しなければなりません。8月末に製造販売承認されてから、ルールがないまま公定価格が定まらず、製造販売承認取得から棚ざらしにされることは、好ましくありません。厚労省は、早急にルールを作り、保険診療で再製造EPカテーテルを使えるようにすべきでしょう。
また、再製造しにくいSUDも存在するといわれていることから、医療機器メーカーには、安全第一で取り組んでもらいたいです。それこそが、日本で制度が根付く近道であるとも信じています。
【MEジャーナル 半田 良太】