2022.04.01
2022年度診療報酬改定の概要が、ほぼ固まりました。医療機器メーカーや製薬企業は、自社製品の特定保険医療材料価格や薬価に一喜一憂し、医療機関は、診療報酬点数が変更されるため、経営層の方々は、厚生労働省の説明資料や、3月に発出された通知などと“睨めっこ”し、今後の経営方針の策定に頭を悩ませているといったところではないでしょうか。医事課などで働く方々は4月からの保険請求事務変更の準備に、忙殺されていると拝察いたします。そうした中で私が22年度改定で注目したのは、今後の医療の変革につながるAI(人工知能)が、小さな一歩でありながらも、初めて評価されたことです。
●政府 「画像診断支援」など重点6分野でのAI開発を加速
現在、医療界で注目されるAIは、今後どのように使われるのでしょうか。厚生労働省の「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」は、(1)ゲノム医療(2)画像診断支援(3)診断・治療支援(4)医薬品開発(5)介護・認知症(6)手術支援-を重点6領域に定め、AIの開発加速に向けた工程表を策定しています。
例えばゲノム医療をみると、AIでがんや難病患者などの遺伝子を解析し、患者ごとに最適な治療法を提示することなどが期待されています。最も実用化が進む画像診断領域では、AIが画像から病変部位を提示するなど、すでに医師の診断を支援するソフトウェアとして、数多く販売され、最も早い実用化が見込まれています。
●まずは画像診断支援から評価
それでは4月から、どういったことが診療報酬で評価されるのでしょうか。厚労省は、今後、様々なAIなどの画像診断支援ソフトが登場することを念頭に、一定の基準を満たした特定機能病院が算定する「画像診断管理加算3」に着目。「加算3」を算定する特定機能病院に対し、新たに専門の責任者を配置させ、画像診断支援を行うAIを、学会のガイドラインに基づいて、適切に管理していることを義務付けることにしました。AIの適切な管理を義務付けることに伴い、「加算3」の点数を、現行の300点から340点に引き上げます。
●複数のAIを適切に管理・運用する特定機能病院が対象
AIを用いた画像診断補助ソフトは、X線、CT画像、内視鏡など、多岐にわたるモダリティーで使われ、撮影部位も様々。医療機関では今後、複数のメーカーの製品を使い分けることが予想されています。
そこで、画像診断の専門医(責任者)が、複数のソフトを適正に管理することで、AIによる画像診断補助(支援)の能力を最大限発揮させることを、「加算3」を算定する特定機能病院に要求すると言うことです。まずは特定機能病院から評価しますが、今後、中小病院、診療所にも門戸を開くかどうか、24年度改定でも注目されます。
●有用性を示したAIの登場に期待感
ただ注意しなければならないのは、今回のAI評価は、あくまで適切な管理を求めたと言うことで、有効性を評価したわけではない点です。
医療分野でのAI活用は、世界的に競争が激化し、開発のスピード感も増しています。産業振興の観点からも、今後は、優れたAIを診療報酬で評価するという道筋をつくり、最先端の医療技術が保険診療で受けられる世の中になればよいと思います。もちろん、少子高齢化の中で、医療保険財政は厳しさを増しているので、あくまで有効性が示されたAIに限定しての話ですが。
【MEジャーナル 半田 良太】