2022.06.01
医療ベンチャーのCureAppが4月26日付で、「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ」の製造販売承認を取得しました。今年中の保険適用を目指しています。塩分の過剰摂取や肥満、加齢などを要因とする高血圧は患者数が多く、医療費も総額約1兆9000億円、薬剤費約5500億円と高額な状況。佐竹晃太社長兼CEOは、「このアプリは、高血圧治療で、医薬品を代替し、医療費適正化に十分寄与する」と期待を寄せています。
●高血圧の治療用アプリは「世界初」
国内での治療用アプリは、CureAppの「ニコチン依存症治療アプリ及び CO チェッカー」が保険適用国内第一弾。今回の高血圧治療用アプリは、ニコチン依存症に次ぐ第二弾を目指しており、CureAppは年内の保険適用を目指しています。そして全世界で見ても、高血圧治療を対象にした治療用アプリは初めてのケースになるそうです。
●「アプリ併用群」は、標準治療群より「血圧が下がる」
「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ」は、「医薬品を使う前の生活習慣修正を支援するもの」。医療従事者が関与しにくい「診察と診察の間の期間」を埋めるもので、スマホを通じて減塩や運動を促すメッセージを患者に発信し、生活習慣を是正します。
同社は、専門の機関を通じて、生活習慣の修正を行うことで降圧効果を十分に期待できると医師が判断した「降圧薬の内服治療を受けていない高血圧患者(I度またはII度高血圧)」を対象に国内で臨床試験を実施しました。試験では、学会のガイドラインに基づいた「標準治療群」と、標準治療とアプリを組み合わせた「アプリ併用群」について、収縮期の血圧がどの程度下がったかを比較したところ、「アプリ併用群」での治療成績が良好だったとの結果が示されました。
●「1万円超」の保険償還でも「生涯医療費は約98万円削減」
少子高齢化の進展で、医療保険財政が厳しさを増す中、CureAppは、費用対効果がどれだけ優れているかというデータも積み上げています。費用対効果評価の一例を紹介すると、「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ」の保険償還を毎月1万3100円から1万2000円程度とした場合、1患者あたりの「生涯医療費が約98万円削減される」との試算がはじき出されたと言います。
●産業振興と医療保険財政の継続性の間で「難しい価格設定」
生活習慣を改善し、薬の処方をせずに血圧が下がることは患者にとって大きなメリットとなります。さらに、脳卒中や心臓疾患などの罹患を予防することで、生涯にわたるトータルの医療費が削減されるとの費用対効果の結果も示されたことから、医療保険財政にとっても福音となる可能性は高そうです。
とはいえ、保険償還の価格設定をどうするか、非常に難しい課題が横たわります。保険適用の範囲をどう設定するか、まだ不透明な部分は残りますが、疾患の特性上、ニコチン依存症アプリをはるかに超える患者への使用も予想されますので、価格設定が保険財政に与える影響は、決して小さくありません。
従来の医薬品や医療機器とは異なり、患者サポートや、サイバーセキュリティー対策なども必要になりますし、継続的なアップデートの費用などもかさみます。保険償還価格が低すぎると、「新たな産業振興の足かせ」になるとの意見も事業者から寄せられる中、厚労省は難しいかじ取りを迫られることになります。
【MEジャーナル 半田 良太】