2024.08.01
2024年度の診療報酬改定では、保険診療と保険外診療との併用を認める「保険外併用療養費制度」が拡充されることになりました。
6月からは、保険適用期間を超えた高血圧治療補助アプリの継続使用が認められたほか、診療報酬の要件を満たさない糖尿病患者への間歇スキャン式の持続血糖測定器の使用も容認されます。さらに10月からは、特許が切れた長期収載品について、後発品との差額部分を全額自己負担することになります。これらはすべて、差額ベッド代などと同列の扱いとなります。
比較的侵襲度が低いプログラム医療機器(以下SaMD)といった医療技術の登場に加え、少子高齢化の中で医療保険制度の持続性を高め、イノベーションへの迅速なアクセスを担保するため、保険外併用療養費制度は今後拡大していく可能性があると言えそうです。
●保険診療と保険外診療の併用は「あくまで例外」
日本の医療は、有効性と安全性が確認されたものを公的保険でカバーすることを原則としています。そのため、厚生労働大臣が認める保険診療と、有効性や安全性が確認されていない保険外診療を併用する場合、患者は保険診療部分を含めて全額自己負担を強いられる建てつけとなっています。
ただ、①保険導入を前提としない差額ベッド代などの「選定療養」②保険導入を目指している先進医療などの「評価療養」については、保険診療との併用を認めています。患者は、保険未導入の部分のみ全額負担となるだけで、保険診療と併用することができます。保険との併用が認められる保険外併用療養費制度は、上記の「選定療養」と「評価療養」の2つです。今回のコラムでは、高血圧治療補助アプリや間歇スキャン式の血糖測定器の「選定療養」にフォーカスします。
先に示した高血圧治療補助アプリと、糖尿病患者への間歇スキャン式の持続血糖測定器の使用への「選定療養」は、患者参加型医療の実践という観点から大歓迎と言えるのではないでしょうか。確かに患者側の経済的な負担は増えます。ただ前者は、スマホなどへのメッセージを通じて、減塩などの行動変容につなげることが期待できます。後者も、血糖値のトレンドを思いのまま把握することで、患者自ら食事の内容や量をコントロールし、生活習慣を是正することも可能でしょう。生活習慣病に真正面から向き合いたい患者にとって、自身の背中を押してくれるアプリや、血糖値のトレンドを知らせてくれる測定器は、病気に向き合う矛や盾となってくれるはずです。
●未病、予防の段階での活用を
少子高齢化の進展で、医療保険財政はひっ迫し、持続可能性に疑問符がついています。貧富の差で受けられる医療に差がついてしまうことは容認できませんが、自らの行動変容を促すサポートをしてくれる医療技術を、保険診療と併用できるような制度改革は今後も進めていくべきでしょう。
まだ医療機関にかかっていなくても、高血圧や肥満、糖尿病を気にする方々は少なくありません。高血圧治療補助アプリや間歇スキャン式の持続血糖測定器は、保険診療でも役立つアイテムでしょうが、未病の段階で活用すれば、更なる医療費抑制につながるのではと切実に感じています。
【MEジャーナル 半田 良太】