
2026.03.02
2026年度の診療報酬改定では、ダビンチなどの鏡視下手術用支援機器を用いた、いわゆる「ロボット支援手術」の採算が改善する方策が講じられることになりました。6月からは、悪性腫瘍やそれに準じる手術で、ダビンチなどを用いた症例数が年間200例以上であれば、新設する「内視鏡手術用支援機器加算」1万5000点(15万円)を算定できるようになります。ロボット支援手術は、医療機器の導入コストが億単位で、ランニングコストも高いと指摘されています。加算新設により、症例の集中する医療機関の経営状況が改善されることが期待されています。
●全国675施設が「保険診療でロボット支援手術」の実績
ダビンチなどを使ったロボット支援手術は、立体的な3D(三次元)画像を見ながら、執刀できる革新的な医療機器として知られます。医師は鮮明な画像を見ながら、人の手首よりも可動域が広いアームを動かし、手振れなどを補正しながら精緻に手術することが可能です。傷口が小さいため回復も早く、入院期間も短縮されるといった患者メリットのほか、術者の負担軽減につながることからも、国内の医療機関に広く普及しています。厚生労働省の資料によると、2024年に保険診療でロボット支援手術を実施した医療機関数は675施設(11万3000件)にのぼることが確認されており、世界有数の配置台数を誇ります。
●ロボットによる大動脈弁置換術「償還されない医療材料費は86万円」
ロボット支援手術は、胸腔鏡下・腹腔鏡下手術に取って代わると世界的に考えられています。とくに国内で急性期医療を手掛ける医療機関は、臨床面のメリットにとどまらず、「ロボットがなければ、学生が就職先として選んでくれない」といった、人材確保の面からも購入に前向きと言えます。
低侵襲で、医師の負担も軽減されることから、ロボット支援手術が普及することにはメリットしかないようにも見えますが、「導入コストが高く、保険で償還されない医療材料も多い」ことが、医療機関の経営にダメージを与えています。ロボット支援手術の手術料は原則、既存の胸腔鏡下・腹腔鏡下手術と同じ評価となります。その後、臨床現場での優越性をエビデンスで示さなければ、高い評価を得ることができない建て付けになっています。現在、ロボット支援手術は32術式が保険適用されていますが、既存手術よりも高い評価を得ているものはわずか6術式です。とくに、大動脈弁置換術ではロボット支援手術で償還できない医療材料費が約86万円に達しているといい、既存手術よりも50万円ほどコストがかかるとの調査結果が示されており、コスト増が医療機関経営を蝕んでいます。
●ロボット加算の新設「高額な設備投資抑制」と「治療成績向上」を狙う
厚労省は2026年度の診療報酬改定で、年間200例超のロボット支援手術を執刀する医療機関に対し、15万円の新設加算で報いることで、数多くの手術を実施している医療機関での医療機器の効率的な活用と高額な医療機器の集約化を促すとの考え方を打ち出しました。
現在、ロボット支援手術で保険診療している675医療機関のうち、年間200例超の実績をクリアしているのは全体の約3割です。加算新設により、執刀数の多い医療機関に症例を集中することで、日本全体での設備投資額を抑えつつ、1医療機関当たりの熟練度を高め、治療成績を向上させることも期待されています。
●ロボットは過剰配置かどうか
少子高齢化の中で、日本全体として医療機能を分化・連携する流れは止められません。医療保険財源も厳しさを増す中で、使用頻度の低い高額な医療機器を、のべつ幕無しにそろえる余裕は医療機関にないはずですし、全ての医療機関が赤字とならないよう、手厚い診療報酬体系を敷くことも不可能です。
一時期、財務省が国内のCT、MRIの過剰配置を問題視しておりましたが、医療側は、病気の早期発見・早期治療につながり、逆に医療費を抑制できるとの論陣を張りました。ロボット支援手術についても、こうしたエビデンスを示すことが肝要になります。逆に言えば、何らかのエビデンスが示せなければ、共同利用の推進や、台数の適正化といった議論を、今後避けることができないかもしれません。
【MEジャーナル 半田 良太】