
2026.10.01
高市早苗政権は、「補正予算依存からの脱却」と、「恒常的な施策の当初予算措置化」を予算編成改革の2本柱に据え、この方針を踏まえた、初めての予算概算要求額を取りまとめました。2027年度予算概算要求の総額は、過去最大の143兆1000億円。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は、27年度予算の概算要求について、25年度補正予算と26年度当初予算の合計額約140兆6000億円と比べて、約2兆5000億円の増加にとどまると説明し、一部で懸念される「放漫財政」には当たらないと、PRしております。
今回の予算概算要求は、危機管理投資・成長投資のための「強く豊かな日本投資枠」を創設したことも特徴といえます。新たな投資枠は、あえて要求額の上限を設けず、これまでにない大胆で柔軟な発想の政策によって民間投資を引き出し、供給力と稼ぐ力を高めていく枠だと、高市政権はその意図を説明しています。今回のコラムでは、新たな投資枠に焦点を当て、高市首相が就任以前から力を入れる「経済安全保障」に絡めた医療機器の予算要求について紹介します。
●国民の生命に直結する医療機器の“優先順位付け”に3億円
厚生労働省は、医療機器政策に特化したいわゆる医療機器基本計画の見直し作業を進めています。次期計画は27年度からスタートする予定で、今年3月には改定に向けた「中間とりまとめ」が策定されました。その中で、国民の生命に直結するため安定供給が必要となる医療機器(以下、安定供給確保医療機器(仮称))を特定し、それらを確保する意義を強調しております。
27年度予算要求では、医療機器基本計画の見直しと連動した案件が散見されます。まず、安定供給確保医療機器を特定し、それぞれの重要度ごとに、A、B、Cランクなどと評価したうえで、次期医療機器基本計画に反映させる方針を示しています。厚労省は「安定供給確保医療機器の同定・評価事業」として、新たな投資枠で3億1000万円を要求しました。25年度の補正予算で2800万円を確保しておりましたが、予算額を10倍増させ、どういった医療機器が安定供給確保医療機器に該当するか、有識者からの意見を踏まえ、急ピッチでその作業を進めていきたい考えです。
●安定確保医療機器の増産・備蓄などに10億円弱を手当て
次に、感染症の流行や関税・レアアースの輸出規制などを想定した医療機器の安定供給を確保する構えも見せています。国民の生命に直結する医療機器のうち、「安定供給の確保が特に求められる医療機器」に絞り、部品・原材料の供給途絶等の非常時に備えて、増産や備蓄に取り組む医療機器メーカーの費用を最大2分の1補助するとしています。具体的には、在庫の積み増し分の増産にかかる「設備投資や人件費」のほか、備蓄する品目の「保管費用」などが補助対象となります。厚労省はこれら一連の取り組みを「安定供給確保医療機器の備蓄体制整備事業」と銘打ち、新たな投資枠を活用して9億4000万円を、新規に予算要求しています。
●ECMOと透析関連機器の安定確保に136億円を計上
最後に、約5年間にわたるコロナ禍で注目を集めた、体外式膜型人工肺(ECMO)や透析関係の医療機器を、“治療がストップすると生命危機に直結する”とし、特出しして、医療機器メーカーの生産体制整備や、製品備蓄に対する支援を行います。ECMOについては、海外に供給を依存している本体、ディスポーザブル機器について、生産体制整備や備蓄に係る費用の半分を国が補助する計画です。
透析関連の医療機器については、とくに透析回路の100%を海外からの輸入に依存していることに強い問題意識を示しています。透析の中止は死亡に直結しますので、製品や原材料の確保に万全を期す構えです。具体的には、医療機器メーカーが、海外で透析回路の原材料を備蓄するケースや、国内で透析回路本体を備蓄するケースについて、その費用の全額を国が補助するとしています。ECMOと透析関係の医療機器に対する「国内生産体制・備蓄支援事業」には、新たな投資枠として新規に136億円を投じるとしています。
●日本の強みを確立し、弱点をカバーする視点も
高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、危機管理投資・成長投資に傾斜配分する予算を編成する考えです。前述の通り「責任ある積極財政」には、一部で放漫財政と懸念する声があることは事実です。今回のコラムでは「責任ある積極財政」全体に対する評価は横に置きますが、こと安定供給確保医療機器に焦点を当てた予算要求については、放漫財政につながるとの批判は当たらず、正当な危機管理投資に該当すると考えます。
ただ医療機器については、治療機器を中心に、海外に依存せざるを得ない分野は少なくありません。このようないまからキャッチアップすることが極めて困難な分野も残念ながら存在すると思いますので、医療機器に限らず、日本全体として強い分野を確立することが、海外に依存せざるを得ない分野をカバーすることにつながると痛感しています。
【MEジャーナル 半田 良太】